それは、静まり返った平日の深夜二時のことでした。ふと目が覚めてトイレに立った私は、足を踏み入れた瞬間に感じた冷たい感触に、一気に眠気が吹き飛びました。スリッパが水を吸い、床一面が鏡のように光っていたのです。視線を上げると、ウォシュレットの本体下部から、規則的なリズムで水がポタポタと滴り落ちていました。これまで何度も使ってきた愛用の洗浄便座でしたが、まさかこんな時間に、何の前触れもなく牙を剥くとは思いもよりませんでした。私の頭の中をよぎったのは、階下の住人への謝罪と、明日届くであろう高額な修理費用の請求書でした。パニックになりながらも、以前読んだコラムを思い出し、まずは震える手で電源プラグを引き抜きました。幸いなことに、プラグ周辺はまだ濡れておらず、感電の恐怖からは逃れることができました。しかし、水は止まりません。懐中電灯で照らしながら、壁際にある止水栓を探し当て、必死に回しました。固着していてなかなか動きませんでしたが、全身の力を込めるとようやく水流が止まる音が聞こえ、私はその場に座り込みました。そこから一時間、私は雑巾とバケツを手に、床に溜まった水を拭き取る作業に追われました。静かな住宅街で、水漏れという日常の綻びに直面したとき、住まいの脆弱さを痛感せずにはいられませんでした。翌朝、専門の修理業者を呼んで確認してもらったところ、原因は内部にある給水用パッキンの経年劣化でした。使用から八年が経過しており、ゴムが硬化して機能を果たしていなかったのです。業者の男性は、「深夜のうちに止水栓を閉めたのは賢明な判断でしたね。もし朝まで放置していたら、床下まで浸水して大ごとになっていたでしょう」と言ってくれました。その言葉に救われる思いでしたが、同時に、形あるものはいつか壊れるという当たり前の事実を、これほどまで切実に突きつけられたことはありません。修理を終え、新しいパッチワークのような床材を眺めながら、私は誓いました。これからは、トイレ掃除のたびに本体の裏側まで指で触れて、水が滲み出ていないかを確認しようと。この夜の恐怖と焦燥感は、私にとって住まいのメンテナンスの重要性を教える、あまりにも代償の大きい授業となりました。今では、静かな深夜に聞こえるのは時計の秒針の音だけで、あの不気味な水音に怯える必要はなくなりましたが、あの冷たい床の感触だけは今でも鮮明に覚えています。
深夜に気づいたウォシュレットの水漏れに私が青ざめた夜