一人暮らしを始めて数年が経った頃、私は奇妙な現象に悩まされるようになりました。夜中にリビングでくつろいでいると、誰もいないはずの廊下の先にあるトイレから、ポチャン、ポチャンと規則的な音が聞こえてくるのです。最初は上の階の住人がトイレを使っている音だと思い込もうとしましたが、どう考えても自分の部屋のトイレから響いているように感じられました。恐る恐るドアを開けて中を確認しても、誰もいませんし、便器の中に異常があるようには見えません。しかし、耳を近づけると確かにタンクの中から水が滴るような音がしているのです。この得体の知れない音は、静かな夜になればなるほど際立ち、私の安眠を妨げるようになりました。何もしていないのに音がするという状況は、まるで誰かが透明な姿でそこに居座っているかのような錯覚さえ抱かせ、次第にトイレに行くこと自体がストレスに感じるようになりました。そんなある日、ついに水道局からの通知で、先月の水道使用量が異常に増えていることを指摘されました。そこでようやく、私はこの不気味な音の正体が故障による水漏れであったことを確信したのです。意を決してタンクの蓋を開けてみると、そこには十年以上も使い古された部品たちが黒く変色し、ボロボロになっている光景が広がっていました。特に排水を止めるための大きなゴム製の玉が、溶けかかったようになり、そこから水が漏れ出していたのです。インターネットで修理方法を調べ、四苦八苦しながら新しい部品に交換した瞬間、それまで私を悩ませ続けていたあの忌まわしい音は、魔法のように消え去りました。静寂が戻ったトイレを前にして、私は安堵とともに、もっと早く点検すべきだったという後悔の念に駆られました。音という形で、トイレはずっと私に助けを求めていたのです。家の中の設備は、いつまでも永遠に動き続けるものではありません。この体験を通して、私は日常の些細な変化に目を向け、異変を感じたらすぐに行動することの大切さを学びました。今では、掃除のたびにタンクの中を軽くチェックすることが習慣になり、あの不穏な水音に怯えることもなくなりました。
真夜中のトイレから聞こえる異音に悩まされた日々