アパートやマンションの管理運営を行う中で、入居者様からのトイレ詰まりの連絡は日常茶飯事と言っても過言ではありません。特に築年数の経過した物件では、配管内に長年の蓄積汚れがあるため、少しの紙の使いすぎでも深刻な閉塞を起こしやすい傾向があります。管理会社へ連絡する前に、まずは私たちが現地に赴き、初期対応としてワイヤー式クリーナーを使用するのが通例となっています。現場に到着してまず行うのは、何が詰まったのかのヒアリングです。トイレットペーパー以外のもの、例えばペット用の砂や女性用衛生用品、あるいは固形物を落とした可能性がある場合は、ワイヤーの使用を一時保留します。なぜなら、ワイヤーで固形物を無理に押すと、共有の縦管まで移動してしまい、他の住戸にも被害が及ぶ「大惨事」に発展する恐れがあるからです。紙や汚物による一般的な詰まりであると判断した場合、私たちは手動式のプロ用ワイヤーを手に取ります。この道具の利点は、配管の中の様子を「手応え」としてダイレクトに感じ取れる点にあります。作業の際は、まず便器内の水位を調整し、周囲を汚さないよう念入りに準備します。ワイヤーを差し込み、最初のトラップを通過させるとき、手元のハンドルに少し抵抗を感じますが、ここをリズミカルに回転させながら越えていきます。詰まりの箇所に当たると、ワイヤーがそれ以上進まなくなると同時に、ハンドルが重くなります。ここで一度ワイヤーを少し引き、再び回転させながら当てる。この「ヒット・アンド・アウェイ」のような動きを繰り返すことで、詰まりの層を一層ずつ剥がしていくのです。多くの場合、十分ほどこの作業を続けていると、溜まっていた水が「スッ」と消えていきます。これが開通の合図です。管理人の立場として最も大切にしているのは、入居者様に「二度と同じことを起こさないためのアドバイス」を伝えることです。ワイヤーで直ったとしても、配管内に汚れが残っている可能性があるため、定期的な高圧洗浄の重要性を説明したり、流せるシートの使用を控えるよう促したりします。ワイヤー一本で解決できるトラブルは多いですが、それはあくまで応急処置である場合もあります。しかし、この道具がなければ、その都度専門業者を呼び、多額の出張料が発生することを考えれば、ワイヤーによる直し方を習得しておくことは、不動産管理の現場において必須のスキルと言えるでしょう。
集合住宅の管理人が実践するワイヤー工具を用いたトイレ詰まりの初期対応